NO.1 アルバート・ワトソン
京都文化博物館で行われた、今回の目玉的展示。坂本龍一のポートレートはKYOTO GRAPHIEのメインビジュアルにも使われている。何が一番驚くって、この写真が30年前に撮影されたもの、だということだろう。
アルバート・ワトソンはポートレートの巨匠として知られているが、その作品をこうして並べて見たことはなかった。アルバート・ワトソンといえば、思い出す有名な逸話がある。写真嫌いのスティーブ・ジョブズに、その撮影が終わった後「たぶん人生で一番よく撮れた写真」だと言わしめた、という話だ。実際この写真は、彼の遺影、伝記の表紙にも使われている。
Albert はSteve Jobs に前にやや身を乗り出すように指示してから、このように言いました-「こんな場面を想像してください。テーブルの向かいに4~5人の人が座っていて、全員あなたの意見に反対です。でも、あなたは自分が正しいと確信しています。」
引用元:写真に隠されたストーリー:Steve Jobs
私も少々写真を嗜んでいるのだが、風景や静物より、どちらかといえば人物もしくは生物の方が、撮影が楽しい。特に人物の写真を撮るときに大事にしているのが、被写体の「キャラ立ち」である。構図とか、完成図を想像して、といった技術的な類のものではなく、なんというか、その人の「意志」や「こころ」のようなものを撮ってみたいのである。それがあれば、良い「画」に仕上がると思っている。「キャラ立ち」と私が命名しているものは、被写体であるその人自身であり、私が被写体に投影して視ている「もの」なのだろう。
写真というのはすごいもので、一瞬を切り取ることでその人の生き方が伝わることがある。よく夫婦は顔が似てくると言うが、長い時間を共に過ごしたくさんのことを乗り越える中で、考え方や生き方が似通ってくる部分があるのだろう。写真が写し撮る「顔」は表面上のものかもしれないが、その人の内面を映し出すことがあるのだ。
ジョブズを撮影したアルバート・ワトソンの話を知ってから、「どんな写真を撮りたいか」をより想像するようになったと記憶している。長くなってしまったが、今年KYOTO GRAPHIEが京都国際文化博物館で展示するのは、アルバート・ワトソン日本初の回顧展である。
会場:京都国際文化博物館