会場について

会場がこれまたどれもこれも趣のある空間だ。京都市内の歴史的建造物やモダンな近現代建築を借りて開催しているのだが、展示をまわると京都の街並みを観光することもできるという、二度美味しいイベントである。数件、私のオススメの会場を紹介する。

二条城

観光スポットとしてメインと言って良い会場はやはり二条城だろう。KYOTO GRAPHIEの展示は二条城の中の二の丸御殿、御清所で行われている。二条城への入場は~16:00なので、気を付けられたし。(とは言ってみたものの、このサイトをアップする頃には会期は終了しているのだが。来年以降も入場時間に制限のある会場は数件あると思われる。)

誉田屋源兵衛 竹院の間

京都室町で創業280年を迎える、帯の製造販売の老舗「誉田屋源兵衛」。この情緒あふれる建物はKYOTO GRAPHIEで何度か展示会場として使われているが、普段は中に入ることができない。10代を数える「山口源兵衛」が代々守り続けた、当時の技術をそのまま残す建物は一見の価値がある。中に入ると年季の入った木造建築が出迎えてくれ、一種の荘厳さすら感じる。その美意識を表す手入れの行き届いた中庭も壮観だった。

このところ、町屋建築の重要さであったり、保存について、という話題を見かけることが増えたが、なぜ重要視されているかというと、一口に「町屋」と言ってもエリアごとに建物が違うからである。たとえば、花街ではお茶屋、西陣では織屋建て、室町あたりではウナギの寝床と言われる商家など、それぞれに特徴があるのだ。町屋ってなんなの?というと、要は間口の狭い家が密接して建ち並ぶ昔の都市型住宅だ。古都京都の「町屋建築」に足を踏み入れられる数少ない機会である。そんな「誉田屋源兵衛」、今回は「竹院の間」「黒蔵」の2箇所で展示が行われていた。

竹院の間での「ピエール・セルネ&春画」展では、おおうちおさむ氏が空間デザインを手がけている。「覗き窓」を思わせる丸窓などを引き継ぎながら、竹院の間の古い建具や京唐紙が、春画とセルネの世界をより一層引き立たせている。建築や空間デザインをやっている人には面白いのではないだろうか。かくいう私も勉強になった。

京都国際文化博物館

アルバート・ワトソン展の京都国際文化博物館は旧日本銀行京都支店である。設計は明治時代を代表する建築家である辰野金吾。三条通に面して左右対称だったり、赤煉瓦に白い花崗岩を装飾的に配していたりと、今の建物では見られないデザインも一見の価値がある。

Y gion

元々スナックやバーがひしめく雑居ビルだったのが、今はレコード店やカフェといった店舗も入っているが、屋上とイベントスペースは解放されていて、今回のKYOTO GRAPHIEのように種々のイベントが催されている。“クリエイティブ雑居ビル”というコンセプトだそうで、アートにグルメ、さまざまなカルチャーが出会い交錯して新しいものを生み出す場所、という意味なんだそうだ。KYOTO GRAPHIE以外にもいろんなイベントの会場になっているらしく、DJをやっている友人は「行くたびに違うことやってて、おもしろいよ〜」と言っていた。機会があれば誘ってもらいたいと思っているこの頃である。

他にも魅力的な古都京都の町屋、寺院、新鋭的なビル、洒落たカフェを貸し切って、と、京都という街の魅力を存分に利用しアートと掛け合わせた展示を行っている。ぜひ足を運んでみてほしい。来年はどんな会場を選ぶのだろうか。

京都が舞台の物語

京都ついでにこちらも紹介したい。私はグラフィックデザインを飯のタネにさせてもらっている身分だが、写真、映画といった映像に関連することだけではなく、アナログの活字も結構好きである。リビングと私の寝室の本棚は本と漫画で埋まっている。物語なら読むのに時間もかからず手に取りやすい、と思う人は多かろうと思うので、京都を舞台にした作品を紹介したい。物語を通して、京都という街の魅力をあらたに発見してもらえれば望外の喜びである。

『福屋堂本舗』
京都の老舗和菓子屋で育った3姉妹がそれぞれの人生を選択し生きていく様が臨場感たっぷりに描かれている。古都京都の老舗、名家に生まれた者のしがらみとそれを受け止め乗り越えてどう生きていくか、3姉妹の全く違うキャラクターを通してしっかりと描かれている、骨太なストーリーである。
個人的には3姉妹の母御、昭和の時代に女性ながら家元を継ぎ切り盛りしてきた、福屋堂本舗女将の肝っ玉の座り方にスカッとする。下のサイトは、3姉妹が恋に人生の選択に悩みながら成長していくストーリーに焦点を当てて紹介している。
福家堂本舗の原作完全ネタバレやあらすじ!ドラマキャストも調べてみた!

『舞妓さんちのまかないさん』
京都といえば祇園、祇園といえば花街。花街の実際の生活、というのは男にとって実にベールの奥に隠された神秘である。『舞妓さんちの賄いさん』はグルメ漫画なのだが、この漫画のいいところは舞妓として生活する少女たちの人間味あふれるプライベートをフランクに描いているところだ。花街、という言葉から連想するようなドロドロとした雰囲気は全くない、心温まる作品である。よければ是非一読してみてほしい。下のサイトでは漫画のあらすじも紹介しており、独特の語り口で魅力を語っている。
舞妓さんちのまかないさん

『夜は短し歩けよ乙女』
こちらは小説なのだが、アニメ映画化もされているので、ご存じの方も多いのではないだろうか。森見登美彦の本屋大賞受賞作品である。主人公は後輩である「黒髪の乙女」に恋をして、乙女を追いかけ京都の街を縦横に練り歩く。
魅力的な登場人物、ストーリー展開のリズミカルさ、独特の世界観で読む人を引き込む作品に仕上がっている。随所で京都の街並みや地理など、細かく書き込まれているから、臨場感を味わえるのだろう。活字が苦手でない方にはぜひ読んでいただきたい作品である。下のサイトは、森見作品ならではの面白さを細かく書いている。
小説『夜は短し歩けよ乙女』あらすじ・感想・擬音の世界(ネタバレなし)